東工大音ゲーサークルBEATECH

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東工大音ゲーサークル"BEATECH"(通称べあてち)の公式ブログです。

K-Shoot MANIAの最高の譜面を語りたい!!


この記事はBEATECH新歓ブログリレー2023 9日目の記事です。

こんにちは。Luineです。普段はK-Shoot MANIA(以下ケーシューと呼称)を遊びながら譜面を作ったり曲を作ったりパッケージを出したりしています。去年、BEATECH ORIGINAL 7thを主導したりもしていました。

BEATECHブログリレーという場を利用して、ケーシューの譜面はいいぞということを大声で叫んでいこうと思います。この記事を通して、ケーシューの良い譜面と、譜面オタクをすることの楽しさを伝えられたらなと考えています。また、長々と譜面オタクをした結果、自分が持っている思想で、基礎的な所以外は大体言語化することになったので、良い譜面を作るための思想の参考としても役に立つかもしれません。

ちなみに、次のツイートにあるように、今年もBEATECHはケーシューのパッケージを制作しており、工大祭2023に向けて出す予定です。公募期間が終わってないうちにこの記事を見たあなた、パッケージに楽曲を出してみませんか?

はじめに

ケーシューがどんなゲームかご存知でしょうか。ケーシューはざっくりBMSのボルテ版といえるゲームです。ケーシューを通して、個人で譜面を作成したり、他の人が作った譜面を遊ぶことが出来ます。

そんなケーシューの大きな特徴の一つとして、高難易度譜面が非常に充実しているということが挙げられます。

単純な譜面数を見ると、Lv18,Lv19,Lv20共にそれぞれ数百曲単位で存在します。特にLv20に至っては、ボルテの20の入門にあたる難易度から、ボルテの20の水準を大きく超えた難易度の譜面まで存在しています。最近ボルテに追加されたSuddeИDeathでさえ、ケーシューにおいては全く最難関クラスの譜面にはなり得ません。

それだけではなく、譜面のバリエーションもとても多様なものになっています。2021年以降にリリースされたパッケージの譜面に関してはほとんど触ってきましたが、爆速鍵盤だけではなく、様々な譜面属性における高難易度譜面が模索されている印象を受けました。その譜面属性は、同時押し譜面、低速乱打、ロング拘束、縦連のような鍵盤配置の模索から、複雑な移行、出張配置、ダブルレーザーのようなツマミが絡んだ配置の模索等、挙げだしたらキリがありません。

また、譜面のクオリティ自体も年々上昇しています。運指誘導を意識して自然に取れるようになっているツマミ譜面など、ただ理不尽に難しいだけでない、非常に楽しい譜面が数多く生み出されています。

以上のことから、ケーシューというゲームは少なくともLv18以上のような高難易度帯において、とても楽しい譜面を大量に遊ぶことが出来るゲームと言うことが出来ます。そのため、高難易度を遊ぶことによる地力上げにとても適しています。実際、自分はケーシューを遊んで地力を上げることによって、インペリアルになったりLv20のSを複数個取ったり18を初見でPしたりしています。

本記事では、そのようなケーシューにおいて、自分が特に好きであり、初見時に感動さえ覚えた譜面を3つ紹介していきます。

ここで、譜面を語る流れは次のようにして行います。

(1) 譜面の概要

(2) 譜面動画・譜面画像

(3) 全体の印象

(4) 譜面の個々の好きな部分の感想

ここで、(4)において、譜面の個々の部分に番号をつけます。その番号は譜面画像に振った番号と対応します。どうぞ譜面動画や譜面画像を見ながら文章を読み進めてみてください。

なお、BT-A,BT-B,BT-C,BT-D,FX-L,FX-RをそれぞれA,B,C,D,L,Rと表記します。

キャンディ・ドロップ・ツインズ!(七色*トリルノーツ)

アーティスト名: みーに feat. 琴葉茜・葵

エフェクター: ショコラティックな琴葉葵

難易度: 18優しめ

www.youtube.com

mikanakino9-amaama.wixsite.com

譜面画像(キャンディ・ドロップ・ツインズ!)

絶妙な難易度の配置、運指誘導の丁寧さ、ツマミ絡みの美しさ等、全体が綺麗に完成されている譜面です。しかし、自分が一番印象に残ったのは音取りの美しさです。ボーカルだけを取るわけでも後ろの音だけを取るわけでもなく、曲の抑揚に合わせつつ、されど拍に合わせてノレるような音取りになっています。その丁寧さは、譜面が見えなくても己の耳を信じてノーツを捌けば全て光るのではないかと思わせるほど。18優しめという難易度で最も楽しい音取りの密度を提供してくれる素晴らしい譜面です。

配置的にも音取り的にも、リラックスして捌くことが出来るため、高難易度を連奏した時に心を癒してくれる譜面でもあります。

あと、琴葉茜・葵に対する赤青ツマミの相性が良すぎる。

(1) メロディ意識のBT-long、スネア意識のFXなど、同じ音に特定のノーツをアサインすることによって、音に合わせて演奏する楽しさを味わせてくれます。また、それ以外のBTによって、グルーヴの気持ちよさを味わうことも出来ます。

(2) この部分から2小節、前半6拍がメロディ合わせ、後ろ2拍が後ろのドラム合わせになっています。音取りを無暗に変えることは、譜面の違和感に繋がってしまうこともありますが、この譜面は、この部分のようにバランスよく音取りを変えているため、ひたすらに納得感と楽しさが上がる音取りになっています。また、押させるノーツ数は多くないもののの、ツマミを使って手を動かさせることによって、操作感も18相応のものになっています。直線ツマミを一回織り交ぜることによって、この短時間においても飽きさせないぞという意識も感じられます。

(3) この小節のFXは、効果音付きのFX-chipになっています。このFX-chipが、展開が切り替わることによる盛り上がりを強調してくれています。FX-chip、自分で譜面を作るときも使いどころにかなり悩むので、上手く使えている人は本当に尊敬します。大体展開の切り替わり直後の小節頭に置きがちでしたが、切り替わり直前の盛り上がりに使うという発想があるんですね……。

(4) 凄い細かいことですが、ここはボーカルに対する音程合わせになっています。密度が低い部分だからこそ、こういう音程合わせが譜面の面白さに大きく関わってくるような気がします。また、しっかり同時押しで置くことによって、密度が低い音取りに対して退屈にならないようになっています。

(5) 直前の地帯がボーカル合わせで、かつ片手というある種「レーンを細く捉える」ような配置になっていたのに対して、この地帯でドラム合わせで、両手で捌かせる4レーンの鍵盤配置という「レーンを広く捉える」ような配置に変わっています。この譜面展開の切り替わりが抑圧→解放の気持ちよさや、楽曲の盛り上がりを感じさせてくれます。

(6) 後ろの文章にも登場することになりますが、ツマミの終点意識がされている配置になっています。自分はツマミ大好き限界オタクなのですが、ツマミの中でも特に美しさを感じるツマミが、終点意識がされているツマミです。ツマミには始点と線と終点があります。ここで、始点や線の造形が意識されている譜面は最近増えてきたのですが、終点を意識している譜面はほとんど見かけません。しかし、ツマミは立派な見た目の持つノーツです。終点を意識するのとしないのとでは、譜面の見た目が大きく変わります。加えて、ツマミの終点意識がされている譜面は、1ノーツ1ノーツに意図、あるいは愛を込めている譜面ということになり、一人の譜面制作者として愛の込められた譜面を遊べて嬉しい……!となります。

この配置ではツマミがFX-longにくっついて消える方式になっており、ツマミが終わる説得力のある理由付けになっています。

(7) ここのFX-chipとBT-chipですが、しっかりFXがスネアでBTが歌詞と意図を持ってノーツが使い分けられています。このような丁寧な使い分けが、音とノーツに対する納得感を強化し、しかも退屈さをなくしてくれています。

(8) 「2人分の声が」という歌詞に合わせて重なっている両ツマミが降ってきます。こういうの素直に好きです。

(9) ここから2小節のツマミに着目してみると、前後半で操作を変えないながらも、前半は狭く直角のみ、後半はツマミ幅を広く後ろに直線も伸びると、盛り上がりが表現されています。

(10) 茜ちゃんの声に合わせて赤ツマミが、葵ちゃんの声に合わせて青ツマミが動く配置です。こういうの良いよね……。

(11) サビに入りました。今まで単押しも多かった配置が、同時押し主体になり、基盤となる鍵盤に変化が生じています。これによって、展開を付けることによって飽きを防ぎながら、盛り上がりを表現することが出来ます。

(12) ここのツマミ、勝手にキャンディ再現のツマミだと思っているのですが実際のところどうなんでしょう?操作をがらっと変える大胆で斬新なツマミで、とても面白い配置です。

(13) 鍵盤主体の配置とツマミ主体の配置が交互にやってくるという流れはそのままに、この部分のようにツマミ主体の所に鍵盤を置くことによって、操作量を増やして難易度を少しだけ上げています。楽曲が進むにつれて難易度を少し上げるというのは譜面作成における常套手段ではありますが、難易度の上げ方における説得力と上げ幅調節の力量がとてつもないです。

(14) シンバル合わせでツマミが置かれています。それによって、始点から終点まで説得力を持ち続ける、美しいツマミになっています。この配置のような「LNとしてのツマミ」も、始点から終点まで説得力を持たせられるアイデアの一つです。また、ツマミと同時に押させる鍵盤が、最初はホームポジション側のFX、後半はBCと少しだけ出張寄りになっていて、自然でかつ飽きの来ない配置になっています。

(15) 自然に導入されるハート型のツマミ。音に合っているお絵描きノーツは良いですね。

(16) 掛け声合わせの直角です。しっかりパートに応じてツマミの色分けもされています。直前の伸ばす音と違う音を取っていると主張するために、あえて直前のツマミを切って、しかも直前のツマミの色と違う側に直角を置いています。これが功を奏し、取っている音を鮮明に感じることが出来ます。

(17) 序盤に流れた同様のパートと音取りは変わっていませんが、最初に流れた方はツマミを、このパートではFX-longを活用することによって、流れを受け継ぎながら、されど違う味を提供してくれます。

(18) 今までとは違うパートであるため、狭いツマミも活用されています。広いツマミも狭いツマミも、それが明確な意図を持っておかれたツマミならば、違う味がしてどれも美味しいです。また、このパートは音取りが本当に絶妙で、序盤のパートにあったように、ボーカルに忠実に音を拾いながら自然にドラム合わせに移行しています。その移行のバランス感覚が凄く、音楽を聴きながらコントローラーを叩いていたら全部光りました。配置そのものも、適度に出張が混ざって非常に楽しい配置です。

(19) たぶんイヤホンの歌詞合わせ。好きです。また、両FXという広いノーツを使うことによって、パートの後半における盛り上がりが表現されています。

(20) こういう形のツマミ、すごい言語化が難しいのですが、スリムで好きです。

(21) 12分で鳴っているドラムを拾っています。前半は単押しの階段、後半は2個押しのトリルにすることによって、単調さをなくし、盛り上がりを付けています。

(22) レーン内を走るツマミ、それを避けるように配置されるノーツ群。譜面に意味を持たせる非常に良い方法であり、自分が大好きな配置です。

(23) ここ以外の様々な場所でも言えることですが、ダブルレーザーが並んで生えている場所において、重なったダブルレーザーと、重なっていないダブルレーザーが使い分けられていることが分かります。この2種類のダブルレーザーを使いこなすことによって、近い位置のダブルレーザーにおいても、パターンを付けることが出来ます。

(24) 何回か出てきたパート。基本の音取りを踏まえながら、今回はツマミを動かしながら片手を振らせたり同時押しを存分に活用したりして、最後という最大の盛り上がりを表現しています。同じパートが出てくるとコピペ+ちょっとした変更で済ませたくなることもあるのですが、この譜面は一切手を抜かず、音取りという統一感を持たせながら多彩なパターンでこのパートを彩っています。

(25) ボーカル合わせの両ツマミ。近い位置にありつつも重ね切らないことによって、密接な関係値と、それぞれの個性が表現されています。

(26) 操作は最後の音に相応しい全押しですが、真ん中2つをLNにしないことによって、重く、のっぺりとしたイメージをなくすことが出来ています。

FOR.EVR(SFES2022)

アーティスト名: Ezo

エフェクター: NI⌉.⌈RO

難易度: 18難しめ

https://ksm-event.com/sfes2022/

www.youtube.com

譜面画像(FOR.EVR)

Arcaea等で有名なnitro氏の譜面です。普通にケーシューをプレイしていては思いつけなさそうな斬新な配置が目を引きます。その斬新な配置は見た目の美しさとプレイ時の楽しさを兼ね備えた、非常に完成度の高いものになっています。しかし、自分が最も印象に残ったのはその斬新な配置の裏に隠された譜面の中におけるゲーム作りの上手さです。この譜面は全体を通して最初に簡単な配置を見せてから、後半にその発展形を置くというスタンスを貫いており、それによって斬新な配置も全く理不尽ではない形で受け入れることが出来ます。今までの常識が壊されるような革新的な譜面であり、それでいて配置の説得力も高いハイレベルな譜面です。そんなとても面白い配置に感銘を受けて、自分の譜面にはこの譜面のような配置がかなり取り入れられています。

ちなみに、nitroさんの他の譜面も非常に面白いものになっているので、SFES2022のパッケージをDLして是非やりましょう。

(1) 最初はただの親指で捌くFX-chipだったものが、FX-longが現れることによって小指で捌くFX-chipに変化しています。LNやツマミを活用することによって同じ位置に降ってくるノーツを捌く手が変化する現象、とても好きです。

(2) 前の流れを受け継いでFX四分打ちを基調としながら、ツマミを操作する手を頻繁に入れ替えることによって展開を付けています。また、ツマミを操作する部分より前に放置ツマミを入れることによって、ツマミを操作する瞬間に自然な運指でFXを取れるようになっています。直線ツマミの始点+鍵盤の配置って地味に気付きにくいので、こういう配慮があるとかなり鍵盤が取りやすくなります。また、鍵盤の直前でツマミを止めるという終点意識も見られます。

(3) ほどよい出張が気持ち良い配置です。この出張が、後の配置の布石になっていて、この配置も直前の8分BT+FXの発展形になっています。

(4) 完全な天才配置。赤青のツマミ、BT-longを一つの線として描いています。これは、操作感の面白さを担保しながら、スリムでクールな造形美も得られるという最強の配置です。ツマミも始点から終点まで全て意味を持っています。最強です。また、この配置はLNを押させる手が順手→出張の形をとっており、簡単な例を提示してから発展形を置く、この譜面の基本パターンに準じており、斬新な配置ながら自然に手を動かすことが出来ます。

自分はこの配置にそれはもうとんでもなく感動して、これを見てからというもの作る譜面の節々にこのような配置を置くようになりました。最近作った譜面のBreak、大体この配置置いてる気がする。

(5) ツマミと鍵盤が、手を交互に動かして取れるようになっています。密度がそこまで高くないパートにおいては、ツマミを操作した直後の鍵盤はツマミを操作してない側の手で叩かせるようにすると、自然な動きで取れるような気がします。この配置は、その思考を忠実に守っており、リラックスして配置を取ることが出来ます。

(6) めちゃくちゃ綺麗な配置の発展形です。(4)における配置を引継ぎながら、鍵盤を増やすことによってハンドスピードをより要求するようになっています。また、同じレーンに降ってくるFX-chipを、順手側で取ったり逆手側で取ったり、両方の手で取るようになっています。これも配置の彩りが増えて面白い点です。

(7) ツマミ出張が入ってきます。きちんと誘導があって唐突ではないツマミ出張はやはり楽しいものです。ちょうどLNを覆うようにツマミが配置されており、配置としての納得感もあります。また、前半でツマミ出張を使うことを予告してから、後半で交差しながらツマミを操作させるという配置を置くことによって、自然な形で馴染みの薄い操作を行わせることが出来ています。

(8) 同じ操作で解決するツマミではありますが、徐々にツマミの幅を広げていくことによって単調にならず、盛り上がりを表現しています。

(9) ここから16小節、規則的な鍵盤と隣接BT同時押しを軸に鍵盤地帯が続きます。しかし、とてつもなく繊細に譜面を展開していき、全く飽きを感じさせない配置になっています。この16小節を4小節ごとに分割し、1→2→3→4と呼称してここで語っていきます。

1の部分は基本となる鍵盤パターンを流しています。そもそもこの鍵盤自体が、FXと同時押し、BT-longをほどよく織り交ぜ、交互や階段を軸に鍵盤が置かれている心地よい鍵盤です。奇数小節と偶数小節で、BT同時押しの位置が変わっており、順手→出張の流れが構築されています。また、前半部分では階段だった部分が後半部分では交互押しになっており、非常に細かい粒度で譜面が難しく、乱雑になっていることが分かります。

1から2にかけて、ツマミが導入されます。また、同時押しの数が増え、常にBC同時押しが現れるようになります。そして、音取りを少し変えることによって、展開に更なる味をつけています。

2の後半部分はツマミの幅が少し広くなり、BT-longを出張させるようになります。ツマミの位置がしっかり鍵盤を避ける構図になっており、しっかり意味があることを感じさせてくれてとても美しいです。そして、この鍵盤出張が見た目以上に楽しい配置になっていて、サイコー!!って言いながらいつもプレイしています。 また、同時押しの位置もちょくちょく変わっていて、シンプルで規則性のある配置だからこそ、秩序を持って配置を変えるという愛を感じ取ることが出来ます。

2から3にかけて、ツマミが少し長くなりました。これに付随して、音取りの展開がさらに変わります。

そして、3から4に進んでいく際にツマミ中の鍵盤を出張させるようになっており、更にBT同時押しが含まれるようになっています。また、4の1小節目と2小節目でツマミの着地点となるBT同時押しの位置が変更されており、完全交互で取る場合2小節目は相応のハンドスピードが求められるようになります。そして最後にキック合わせのFXを降らせ、ツマミを広げて次の展開に続きます。

ただ譜面を遊ぶだけでもなんとなく飽きがこない鍵盤だということは分かりますが、しっかり見ると(自分が引くレベルに)細かく展開が付いていることが分かります。本当に最高。

(10) 曲の展開が変わり、ツマミ主体の譜面になります。この直線+直角という配置、1つの直線という軸に直角が生える、非常にスリムながら、横への伸びも感じられるとても綺麗な配置です。1つ1つの直角を思いっきり飛ばせる気持ちよさもあります。また、前半から後半に進むにつれて鍵盤出張が増えたり、直角の数が増えることによって、更なる展開も付けられています。また、BTとFXが共にバランスよく用いられていて、鍵盤も色鮮やかで気持ち良い配置です。

出張の鍵盤も、前半は順手→出張→順手という鍵盤が置かれていたものが、後半パートの後ろ側の鍵盤は出張→順手→出張という鍵盤になり、よりハンドスピードが求められる配置になり、ここでも展開が付いていることが分かります。

(11) 8分のキック合わせの両FXですが、最後の16分がBTになっていることによって「ここは両手で捌いてツマミを持つ手を変えるんだ」という判断が付きやすくて良い配置です。

(12) LNでメロディを取りつつ、キック合わせのFXだったりツマミが絡んだりする、サビらしい色々な要素の絡み合った配置です。LN+FXという配置はかなり気持ち良く取ることが出来ます。ツマミ絡み部分の配置がかなり斬新で、順手内側でBT-longを拾いながら出張側のFXを拾うという配置になっています。大抵の場合順手でLNを拾いながら出張側の鍵盤を押させるという配置はただの誘導ミスによる産物です。しかし、この配置に関してはBTを拾っている人差し指を軸にして手を回転させることによって、自然に出張側のFXに手を伸ばすことが出来ます。これも今まで考えてもこなかった面白い配置で、自分も何回かこの類の配置を擦るようになりました。

また、後半のパートはエフェクトを活用して捌かせる鍵盤を増やしたり、直角を小節頭に増やして要求ハンドスピードを上げたりして、心地よい発展形を提供してくれています。

ツマミの造形も、前半はBT-longから生えてBT-longに収束する構図、後半はBT-longから生えて直角によってBT-longを閉じてから反対の色のツマミによってツマミを切る構図になっており、意図が感じられる綺麗な形になっています。

(13) 一番最後のパートに相応しい、今までの譜面のエッセンスが全て詰め込まれたパートです。要求地力も、譜面の派手さも最高潮になっています。今まで語ってきたような、直線+αな形で展開される美しいツマミ、BT-longを中心に広がるツマミ、BT-longを取りながら手を回させる出張FXと、全ての要素が詰め込まれています。譜面の部分部分の展開の丁寧さが凄い譜面ですが、それに加えて全てが最後に持っていくための布石だったという展開が、曲を通して一種の完成されたゲームを遊んだような満足感を得ることが出来ます。

蒼天とワタツミ[RanKirby](RanKirby's Additional Chart Collection)

アーティスト名: Acotto

エフェクター: らんかび

難易度: 20優しめ

drive.google.com

差分元: ミカンノケイキ

(この譜面を遊ぶには差分元パッケージのDLも必要です)

mikanakino9-amaama.wixsite.com

www.youtube.com

譜面画像(蒼天とワタツミ[RanKirby])

ケーシューで一番好きな譜面です。鍵盤の造形、鍵盤の操作感、ツマミの造形、ツマミの操作感、エフェクト等々、どの要素を取ってきても完璧といえるほどの完成度になっています。また、自分がツマミの造形においてあると嬉しくなる終点意識は全てのツマミに込められているという徹底ぶり。長い曲で、かつ20であるためノーツ数は相当多いですが、その全てに意図を感じられる、譜面作成に対する愛の塊のような譜面です。始めて見た時は冗談抜きで涙がこぼれました。自分はもはやケーシュー譜面の完成形、ケーシュー譜面のイデアがこれであるとさえ思っており、この譜面の面白さのエッセンスを(思想を交えつつ)自分の譜面に込められるように、日々譜面を作成しています。

自分は配置を主体に見る人間なのでこの記事も配置を主軸にして語っていますが、エフェクトや視点変更も非常に高クオリティなものになっています。そのため、そのような観点に着目して譜面を見ても良いかもしれません。全ての完成度が高いため、それぞれの人が違った視点から良さを感じられる譜面であると考えています。

この譜面はRanKirby's Additional Chart Collectionという、らんかびさんが作成した差分譜面をまとめたパッケージに収録されています。そして、らんかびさんはこの譜面のような、非常にクオリティの高い譜面を量産しています。そのため、おうち環境のある人は今すぐにケーシューの様々なパッケージ(発狂KSM os/us難易度表にパッケージのリンクが置いてあります)とRanKirby's Additional Chart CollectionをDLして遊ぶべきです。今すぐにです。

(1) 開幕から音に合った美しいツマミです。ツマミの間隔も最初閉じられた状態から徐々に広がっていく構図が美しく、青放置ツマミを入れた状態から広げていくことでツマミ始点における納得感も強まっています。終点もしっかり両FXで閉じるという意識を持って切られています。

(2) よく見ると、実はかなり音程に合ったノーツになっています。BT-long等で拾っているメロディ合わせと思われるノーツを眺めていると、同じ音程のものは縦連で、音程が上がっているものは右に、音程が下がっているものは左にノーツが移動していることが分かります。ほどよい同時押しを置くことによって操作感を担保したり、縦連として置かれている鍵盤以外は縦重なりをなくすことで、音に合った重さの鍵盤を捌かせてくれます。

(3) ツマミを置くことにより、音程合わせを意識した鍵盤はそのままに、鍵盤操作の味を変えてくれます。

(4) 直角によって直前のツマミの終点が説得力を持ちました。直角が徐々に左に寄っていくのは音程が下がっていくメロディ意識でしょうか。そもそも、直角の色が交互に変わっていることによって、手を大きく動かすことができ、とても楽しい配置です。この小節最後のBTも、後ろの音の上がっていく音程に合わさっています。

(5) メロディ合わせの鍵盤を捌かせながら、後ろの音もなっがいBT-longで丁寧に拾っています。ツマミがBT-longから生えてBT-longに収束することによって説得力が付いているのも楽しいポイントです。

(6) 最高の配置です。ピアノの音の遅れに合わさって展開されるBT-longは、音としての納得感も見た目としての美しさも兼ね備えています。そしてBTの終点から展開されるツマミ、これがBTの終点に対する説得力、ツマミの始点に対する説得力、そしてBTとツマミの間に余白があることによる繊細な美しさを持っています。これはFX-longについても同様の性質を持っています。

そして、曲線ツマミですが、このFX-longにはTapeStopエフェクトがかかっており、その効果でゆっくりと楽曲の音程が下がっています。それに合わせて青ツマミを左に動かすことによって、操作が減ることによる退屈さを完全に消し、音程に合わせてツマミを操作する気持ちよさをもたらしてくれます。加えて、青ツマミが動き出す直前に赤ツマミが消えることによって、青ツマミが赤ツマミを消したというツマミ終点の説得力を生んでもいます。

ツマミを操作しながら訪れる静寂。これがかき消される、その瞬間、青ツマミの直角がやってきます。これによって、操作としても静寂から解放されることになります。その瞬間、音に合わせて降ってくるBT。 たった4拍の配置ですが、私を感動させるには十分すぎるほどの愛の質量を持つ素晴らしい配置です。

(7) 鍵盤を叩かせる地帯が始まります。ここもやはり音が丁寧に拾われていて、必然性のあるところ以外は縦重なりの鍵盤が避けられるように配置してあるため、ほどよい重さで鍵盤を捌くことが出来ます。

(8) ここでツマミが絡み、出張の鍵盤が入ります。直線始動のツマミ+出張鍵盤は、場合によっては直線が動き出していることに気付かずbad誘導になってしまうことがあります。しかし、このツマミは曲線ツマミとして開幕で素早く移動するため、そのような見落としが発生する確率を減らし、自然に取れる配置になっています。また、BT終わりのFXがBTの終点の説得力を持たせていたり、BT-longを軸に回転させて簡単に取れる面白い配置になっています。そしてこのFX-chipを境に雰囲気が一回変わることが、ツマミを用いて美しく表現されています。

(9) ここから8小節のツマミを見てください。美しいと言う他ありません。鍵盤を見ても、ツマミを避けながら配置された鍵盤、ツマミと鍵盤の余白が美しさを生み出されていることが分かります。ツマミは青ツマミを軸に少し離れた所から赤ツマミを生やしたり、逆にツマミから直接生やしたり、ツマミから直接生やして、その後対称的なツマミを生やしたりと、全てのツマミに非常に鮮やかな始点意識を感じ取ることが出来ます。終点についても、FXで切ったり、BT同時押しを壁のように見て切ったり、ツマミの中に収束させたりと、全てのツマミの終点に多彩な理由が与えられています。

また、操作感としてもツマミと鍵盤を行ったり来たりして手を思う存分動かしながら、鍵盤出張によりまた違った味を楽しめたりと、非常に面白いものになっています。7小節目のような、片手でツマミを操作しながらもう片手で広い鍵盤を取らせる配置は、操作として特に好きな配置です。

(10) ここのBT-long+B、ノーツ間隔があるおかげでちょっと手を頑張らせて取る、という動作を自然に行えて楽しいです。

(11) こういう何気ないBT-longにもFXを用いて終点の理由付けされているのが非常に気持ちいいですね。

(12) 青ツマミという曲線ツマミを軸にして、赤ツマミがそれに沿うように横に流れていきます。もはやケーシューでないと言いたくなるほど凝った美しい造形のツマミです。余白がまた良い味を出していますね。

(13) 一回展開が変化したため、ダブルレーザー主体だった譜面から青ツマミ1本を伸ばす片手配置に移行しています。ここの鍵盤配置も、丁寧に音を意識した縦重なり配置が置かれています。

(14) ここ、譜面画像では分かりませんが、傾きが非常に素晴らしいです。楽曲に合わせて横にゆらゆら揺れているのですが、傾き方が非常に自然で、楽曲の水のようなイメージにもよく合っています。また、この揺れがダブルレーザーの合間にツマミ直角が挟まるという予告にもなっており、プレイ感としても意味を持っています。ダブルレーザーの合間にツマミ直角を挟むというのも、非常に大胆ですが、美しい配置です。ダブルレーザーを展開したことによる盛り上がりと、ツマミ直角による操作感の向上を兼ね備えています。

(15) この配置のように、ツマミ絡み交互操作は楽しくて仕方がないです。

(16) ここから8小節を前半と後半に分けて見てみましょう。前半のツマミは、直角が重なる際にツマミを切られていたり、余白があるもののBT-longの続きからツマミが生えていたりと、やはり一つ一つのツマミに意図が込められている美しい配置です。ここで後半のツマミを見ると、展開が進んだということで、逆にツマミによってもう一つのツマミが消されないようになっています。どちらもそれ単体で美しい配置です。ここで、全体を眺めてみると、どちらも共通して外側一方向に流れていくツマミであることが分かります。このことから、前半はツマミが干渉して途切れるような、繊細なイメージだったものが、後半に進むことによって重なり合っても途切れない、強固なイメージを持つようになっています。単体としてのツマミの造形も美しいですが、このような繊細な展開の付け方も美しいですね……。

(17) 一回鍵盤を出張させることが心地よい。その上、この出張によって手が真ん中に寄り、結果後ろの両FXを自然に片手で取ることが出来ます。非常に綺麗な誘導です。

(18) 最高の配置です。BTをズラして配置することによって、楽曲の有機的な雰囲気が伝わってきます。そして、このツマミ、そしてそのツマミからBTが生えているという構図が本当に素晴らしいです。さながら叩いている気分は魔術師のよう。そこからツマミ出張していた右手を元に戻しトリルを叩かせるのですが、そのトリルの配置も天才的なものになっています。後ろで一旦音が沈んでいくことから同時押しの数を減らしています。ここで、全て重なっていることによってプレイヤー側が同時押しの数を正確に減らさなくても巻き込まないという配慮が光ります。操作感は理不尽にせず、見た目を非常に色彩豊かにしてくれます。美しい。

(19) ツマミを重ねることによってツマミが占める面積を少なくし、静かな雰囲気を出しながら曲線を踊らせることによって優雅な雰囲気も表現しています。

(20) 鍵盤中心に移行します。交互押し主体で16分もふんだんに使われた鍵盤が、これからの盛り上がりを予告してくれます。

(21) 盛り上がりによって、ツマミが展開されます。ここの鍵盤における、BT-long→FX-long→12分エフェクトFX-longという流れが綺麗で、自然にその展開を飲み込むことが出来ます。また、拍に乗せてやってくるFX-chipも非常に気持ち良いです。ダブルレーザー操作の部分も、一定の面積を占めることによって十分な盛り上がりに足りる配置になっています。

(22) 最高の配置です。一方のツマミを軸にして、余白を取ったり取らなかったりしながらもう一方のツマミの直角を展開していきます。当然ツマミを軸に始点と終点は全て理由を読み取ることが出来ます。また、4分主体だった直前の配置から、8分の同時押しを強く押させる配置になることによって、確かに楽曲が盛り上がっていることを感じさせてくれるのがとても良いです。

(23) 楽曲の盛り上がりに相応しい広い同時押しです。しかし、同時押しの数も調整されており、とても押せるわけがないほどの難易度にはならないようになっています。同時押しは楽しい。ボルテにもそのことが伝わって横に広い中速20を書いてくれないかな

(24) 展開されるFX-long、音程合わせのBT、後半部分におけるBT-longのみの配置が、楽曲の静寂と、その先にある盛り上がりにこの上なく没入させてくれます。

(25) ここで鍵盤譜面となります。この鍵盤も、全ての鍵盤をバランス良く叩かせてくれるため、押していて理不尽を感じない、とても楽しい鍵盤になっています。最初に乱打で展開してから、交互押しで捌ける配置を置くことにより、単調でもなくなっているのがより良いですね。

(26) そしてツマミが介入してきます。ツマミが入ることによりいっそうの盛り上がりを感じさせつつも、直前の鍵盤にあった乱打、交互のエッセンスは引き継ぐことにより、統一感を持たせています。

(27) ここ、TapeStopエフェクトとRetrigger16エフェクトがかかっているのですが、ガチでエフェクトが美しいです。

(28) 盛り上がり最中のメロディに相応しい、BT-long3つの同時押しです。ここもBT-longの終点をあえてずらすことによって、楽曲が持つ優雅な香りを表現しています。

(29) ここも例によってBTの終点がFXやツマミによって理由付けされていて、とても美しい配置です。

(30) BT押しながら逆手側のBTを頑張って取る操作感が面白い地帯です。一見無意味に思える放置ツマミも、そのツマミの色に注意を向けさせることによって後半のツマミ出張を自然に取れるようにするという意味を読み取ることが出来ます。

(31) ツマミに対する始点意識・終点意識が積み重なるとここまで美しくなるのかというツマミです。もはやたったの数秒間では認識不可能なレベルに凝ったツマミですが、鍵盤でしっかりと誘導されているため楽しんで取ることが出来ます。

(32) ツマミによってエネルギーを1点に貯めてから両FXで開放、そのエネルギーは時空すら歪ませ、譜面はワープします。これは妄想による戯言ですが、そんな怪文書が湧いてくるくらい没入させてくれる素晴らしい演出です。ワープした後半速になることにより、後ろの譜面を認識しやすくしてくれるのも最高です。

(33) 露骨ではないけど意識したら気付くことが出来る、音程意識の右に流れていく同時押し鍵盤が降ってきます。最後の3打がBT同時押しで統一されているのが楽曲と合っていて非常に心地よいです。

おわりに

お疲れさまでした。とんでもないくらい長々と譜面について語りましたが、これで今回紹介した譜面の魅力を語りつくせたとは全く思っておりません。自分は配置に着目して見がちなので、ツマミの造形や展開を中心に語ってきました。しかし、別の人がいればまた別の所に魅力を感じるものだと思います。ここまで読んでくださった人がいるのならば、その人は立派な譜面オタク、あるいはその素質を持つ人だと思います。あなたも好きな譜面に対してオタクしませんか?それと、あわよくばケーシューを始めませんか?